神経の治療について <1>
現在私の診療では行っていませんが、実際の臨床では一般的に行われていています。
西洋医学の考えでは感染してしまった所はすべて取り除くのが原則です。
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むし歯はすべてとる必要がある
つまり、細菌が感染してしまった部分は元に戻らないからと説明できます。
また、歯の特徴として
身体の骨と同じように硬い組織なことも影響していると考えられます。
( 悪い所との境界線があるため )
ですが、例えば別の身体の部位に細菌が侵入した場合はどうでしょう。
肺に細菌感染したら肺をとるでしょうか?
また、結核にかかっても肺をとるでしょうか?
みなさんご存知のようにどちらでも肺をとったりはしません。
細菌感染には薬をもちいます。
そして細菌がいなくなった所は身体が治してくれます。
このように、本来生体には自己治癒力があります。
虫歯や歯周病も細菌の感染症なので同じようなアプローチがあってもいいわけです。
実際に海外でかなり昔にそのようなアプローチがありましたが、うまくいきませんでした。
そして、虫歯治療には原因の感染源を残すわけにはいかないので虫歯菌の入ってしまった
“ 悪い所はすべてとる ” 治療法が一般に使われるようになりました。
まだ虫歯の進行が大きくなければそこまでの影響はないかもしれません。
しかし、神経の近くまで進行していたり、痛みの症状がでてしまった場合には従来のやり方では神経をとらない
といけません。
確かに患者様の訴えが 「歯が何もしないで痛みます」 や 「熱い物がジワーとしみます」 などであれば
神経をとることで症状はなくなります。
正直に言えば、歯を使って食事をしないのであればこの方法で何も問題ないと思います。
ですが、本来は食ベ物を細かくして咀嚼しやすくする器官なので咬む力がかかります。
歯科治療は咬む力に耐えられるように治さないといけません。
また、歯科の修復材料や接着剤は必ず劣化してしまうので再治療の必要性があります。
ということは、削る量が少なければ少ないほど良いのではないでしょうか?
削除量をみてみると、神経の治療の場合はおおよそ歯の上(歯冠)と下(歯根)の部分を合わせて50%以上は
削って修復します。
それは神経の治療は歯の構造上、感染した神経とその歯質を取り除くため、
術野を見えやすいように拡大する必要がある事と
咬む力に負けないように被せ物にする頻度が高いためです。
また、神経が入っている根管は大変複雑で治療が難しく神経を取り残してしまうと、
感染した神経は虫歯菌の栄養になってしまったり、生体内で異物と認識されてしまうと
アレルギー反応を起こしてしまい治癒がうまくいかない事があります。
このような経過をたどると、「 治りが悪いので歯を抜きましょう 」 と言われてしまいます。
実際に当院に来院された患者様にも根の中がなかなか治らなかったため転院されてきた方は
このようなお話を聞くことがあります。
私も大学を卒業して東京医科歯科大学の総義歯専門の医局に在籍していましたが、そこは義歯以外の
治療もやって良い自由がきく所であったので、
そこで、勉強するにつれて歯の被せ物などを行う場合は神経の治療分野の<歯内療法>という分野が重要
と思うようになりましたので歯内療法の先生方の新人研修に参加して勉強をした覚えがあります。
ですが、その方法では私の理想には届かないと感じまして、違う方法を模索し、現在の削らない治療をとりいれる
ようになりました。
歯の治療を細かくわけても、<良くかめるようにする>ためには別の視点が必要だと思います。
それはこの次に載せようと思います。